「…………」
コート上での彼女を見て――その魅力に囚われた。
一度輝く姿を見てしまうと、日常のシーンでさえ、色付いたように見えてしまう。
朗らかに周りを盛り上げてくれるムードメーカー。
一方で、闘志を露わにする、負けず嫌いのテニス少女。
どちらも梅枝夕紀の欠かせない存在要素で――どちらかを強く意識することで、その両方が愛おしく感じてしまった。
「――まだまだっ!」
ボールが、ネットにあたって遥か手前で落ちる。
懸命に飛び込みながら、ワンバウンドしたボールの落下点へ、ラケットを伸ばす。
たかが練習でも、全力。
一歩間違えれば、怪我をしてしまうようなプレー。
頑張れ、と。
応援してしまう魅力が、これみよがしに輝くのだ。