「……どうして逃げ出したんですか」

 乱れた呼吸を整えながら、静かに質問する。

「あんな風に逃げ出しちゃったら、篝火先輩でなくても誤解してしまいますよ」

「……ごめんなさい」

 しゅん、と。
 橋姫先輩は、力なく打ち沈む。
 だが、先ほどの慌てぶりとは打って代わり、かなり気分も落ち着いたようだ。
 怯えた瞳は姿を潜めている。